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堂を出ると、中庭に面した回廊に出る。腕の中でむずがるミラを開放してやると、ミラはおぼつかない足取りで中庭に走り出た。
「わぁ――」 丸く大きな月の光が、津々と庭の木々草々に降っている。その足元は明るいと言っていいほど明るく、雲ひとつない空の方が、光を映すものがなく暗い。夜中のため咲く花はないが、それが余計に静寂の中にぴりりとした冷たさを伴って――つまり、とても美しかった。 光の中でくるくると踊るミラに、これはしばらく動きそうにないなとルカは諦めて、回廊の天蓋を支える柱に背を預け、座り込む。上着を貸してしまった体に、夜気はやはり涼しかったが、寒いとは感じなかった。思うより、飲んでいたらしい。 なおも庭の中へ入っていこうとするミラに、ルカは声をかけた。 「あまり奥へ行かないほうがいい。池があるよ」 「……」 だからそこら辺で遊んでいなさい、という意味の言葉だったのだが、ミラはくるりとルカの方を振り返ると、そのままぱてぱてと回廊へ戻って、ルカの隣に腰をおろした。 肩にかけたルカの上着にうずもれるようにしながら、ミラは言う。 「『私たち』は、気にいった?」 その言葉に、ルカはめずらしく面喰った。 「なに?」 「みんなねぇ、ルカにとっても会いたかったのよ。とっても、うれしかったの」 ふふふ、と笑って、ミラは続ける。 「大変だったのよ? たった一人で蘇芳城に乗り込んだのはどんなやつだったんだー、会わせろー、会わせろー、って。ガザが人払いなんてするから、もう暴れだしそうな勢いで」 「……」 「でね、あんまりうるさいから、あたしをずっと助けてくれてたのは王子様よ! って言ったら、みぃんな黙ったわ」 「――ミラ、それは」 ルカの言葉を切って、ミラは強く言う。 「うれしかったの。王子様のあんたが来てくれて、皆うれしかったの」 月の光を受けて、ミラの言葉は凛と輝く。 「王子様なのに、お城を捨てて、たった一人で、あたしたちを助けに来てくれて、とてもうれしかったの。お城の中で、ずっと安全に暮らしてきた人が、あたしたちのために来てくれたのが、うれしかったの。あたしたちのしてきたこと、しようとしてることが、ただのわがままじゃなくて、どんなに残酷で非道でも、どうしても必要な、真実の行動だって認められたみたいで、うれしかったの。――うれしかったの」 うれしかったの。そこに寄せられる、安心という感情。 ルカは、宴の席で感じた落ち着かなさの理由に気づいた。――それだ。 王宮の中にあって、ルカはずっと『裏切り者』だった。国の王子でありながら、倒国を決意していた。確かに、罪があったのは王や官らだったが、だからといって国を斃す権利をルカが授かっていたわけではけしてなかった。自分にあったのは、いずれ玉座に上がったその時に、治世の策として彼らを断罪すること、ただそれだけだったはずだ。 それを放棄して、階下から彼らに刃を突き付けることは、確かに裏切りだった。 嫌悪感と罪悪感。それらだけを抱えて、ルカはあの巨大な王宮の中ずっと独りだった。それが、ここはどうだろう。 ここには、自分と同じく国を倒そうとする人がいる。この裏切りを、「うれしかった」と讃えてくれる人がいる。そして、自らの行動に非道を感じる人々がいる。 ルカは、初めて自分と心を同じくする者たちと出会ったのだった。それが、照れくさくてうれしくて、なんだか落ち着かない気分だったのだ。 (うわぁ。ガザの言ったとおりじゃないか) ルカは、杯の底を知らない。けれど、ここに集まった連中だって、そんなもの見たことがないのだ。なんたってここの連中は、瓶で酒を呑むのだから。 抱えた膝に顔をうずめるようにして猫のような瞳でこちらをうかがうミラを、ルカはとても優しい気持ちになって見返す。 「皆は、私を気に入ったかな」 「わかんないの?」 「わからないんだ。今までずっと、私は独りだったから――」 次の瞬間与えられた柔らかな衝撃を、今度は避けることができたにも関わらず、ルカは甘んじて受けとめた。ミラは細い腕でルカの頭を抱き、その艶やかな黒髪に頬ずりしながら、子供をあやすような甘い声でささやく。 「よく、がんばったね。独りは、さみしかったでしょう? ルカ――ルカ。よくがんばったね」 耳元にかかる息が、熱い。 「独りはとってもさみしいもの。ね、さみしかったね。でももう大丈夫。私たちがいるわ。私も、ガザも、他のみんなも、皆ルカのそばにいるわ。もう、もうさみしくなんかない。でしょう? ――よくがんばったね」 そしてもう一度、がんばったね、とミラは言葉を紡ぐ。 思えば、こうして誰かの胸に抱かれることなんて、物心ついてからはなかったことに、ルカは気づいた。母が亡くなったのは七つの頃だったし、妻はこういうことが得意な人ではなかった。父にだなんて、畏れ多くて考えたこともない。 二十四年間、損をしたなあと、笑ってしまうようなことを思った。 「――明日からも、頑張らないとね」 「だいじょうぶ。みんなが仲良くしてくれるわ。……あ、でもヘラはダメよ」 「ヘラ?」 「宴会を出てくるとき、話してたでしょう。でも、ヘラにはクフがいるからだぁめ」 「クフって言うと……」 「竹馬」 「なるほど。うん、彼には敵いそうにないな。じゃあ、縄跳びの男は?」 「ロン? ロンはねえ、牛飼いなの。ほんとは闘牛のほうがうまいのよ」 「へえ。じゃあ他の――」 そこで見やると、ミラはルカの肩に頭を預けて寝息を立てていた。しっかりと喋るものだから醒めているのかと思っていたが、そうでもなかったらしい。そういえば、言葉がどことなく幼かったな、とルカは小さく微笑みを落とした。 見上げれば、月はずいぶんと西へ傾いている。依然、堂の方からはにぎやかな声が聞こえてきていた。 えらくみっともないところを見せてしまったな、と思う。それをまだ気まずく思う自分は、まだまだ『彼ら』に慣れていないのか。 とにかく、ルカはとても温かいそれを抱き上げると、明るい声を背に歩き出した。 Thank you for 3000hit,AZUSA!! +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ということで、梓からの3000hitリク「『ストック』でほのぼの」完結編でした。 ストックでは、これが限界です!! 前半はシリアス、後半はなんだかいちゃいちゃ話してるだけ、という甚だお題に添えていない代物ですが、御容赦願います! ほんとは、もっと竹馬の人とか出てきてギャグっぽくなる予定だったんだけどネ……(結局ほのぼのではない)。 なんにせよ、3000hitありがとうございました! あんまり遅くなったので、お詫びにおまけ書いてみました。お約束な展開です。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ひどい頭痛で目を覚ますと、寝台のそばには、ヘラを始め昨日酌み交わした女たちが、ずらりとそろっていた。そして女たちは、ミラが目を覚ましたのに気づくと、声をそろえて言い放つ。 「昨日あれから、ルカとどうだった!!?」 ズバン! と盛大に音をたてて、ミラはルカが仕事をしている扉を開ける。いつもなら、先に声をかけて了承を取ってから開けるのだが、今朝にそんな余裕はない。 開けたそこでは、何やら小難しそうな書簡に囲まれたルカが、驚いた顔でこちらを見ている。もちろん、音に驚いたのだろう。 「あ、ああああの、ルカ――」 「ミラ。……おはよう」 「お、おはよう」 室まで乗り込んだはいいが、いざ本人を目の前にすると、どう言葉にすればいいのかわからない。背中では女たちがきゃいきゃいと押してくるし、ルカにはどうした、と首を傾げられるが、あの、えーと、など唸り声があがるだけ。 (だってだって、どう聞けばいいっていうのよー!! 『あたしたち、いくところまでいっちゃった?』なんて、言えるわけないじゃないのー!!) ヘラたちによるとである。昨日酔っぱらったミラのお色気攻撃により、ルカは陥落。盛り上がりだしたところの宴をそそくさと抜け出し、ヘラ等が止めようとするとミラを抱きかかえて寝室へと入った、ということだ。その後遅くまで、ルカは自室に帰らなかったらしい。 (ぜんっぜん何にも覚えてないってのよー! 体だって何ともないし。それって、そういうもんなの? あ、それともルカがすっごい上手とか――って、そうじゃなくって! でもでも、起きたとき、なんだか知らないけどあたし、ルカの上着抱いてたのよね……。やっぱりそれってそういう……。えー! ほんとに何も覚えてないのよ!! もったいないことした――って、そうじゃなくって!!) 「あの、ミラ」 「!!!!」 心配そうに、ルカが顔を覗き込んでくる。 目前には、ルカの整った顔。背後には、興味津々な女たちの圧力。とうとう耐え切れなくなって、ミラは叫んだ。 「あたし昨日、どうだったの!!?」 その場に、沈黙が落ちた。ミラは肩で息をしながら、女たちはぐっと息をつめて、全員がじっとルカに視線を注いでいる。 突然のことに唖然としていたルカだったが、しかし、ミラと女たちのそれぞれに上気するその様子から全てを了解し、意地悪くもそれは魅力的に微笑むと。 「とても、可愛かったよ。あんなに情熱的に慰められたのは、初めてだ。……昨夜のことは、きっと一生、忘れられないな」 女たちから、月をも落とすような嬌声が上がったのは、言うまでもないことである。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ |
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風邪引いて部活さぼったくせに、チャリとばして本屋に行ってきました。
帰りには、地味に降ってた雨のせいでサドルに座れず、終始立ちこぎで帰ってきました。馬鹿です。 ほんとはジャンプSQの「屍鬼」だけ立ち読みして帰ってこようと思ってたのに、気づけば「らせつの花」3冊読みきってましたよ。 それから、ちゃんと屍鬼も読んでるっていうな! 本能って恐ろしい。 購入物は、「ボクを包む月の光」5巻。 前巻までわりとほのぼのだったのに、いっきにシリアスになってましたよ。さすが輪くん。 でも、とても好きな雰囲気だ。 相変わらず、鼻とのどがやばいです。 とりあえず今日は、古文の予習と化学のノート作りだけして、早く寝ようと思います。 しんどいのにわざわざ勉強するのは、その方が早く眠くなるからですよ。 |
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修学旅行帰って一発で、風邪引きました。
熱はたいしたことないんですが、鼻と喉がやばいです。ティッシュの消費が激し過ぎる。 何が問題かって、代休中の課題がちっとも終わってないんだな。 |
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合図は月の下 高い咆哮
祭壇で眠るお姫様の香りに酔わされ 歓喜に身を捩るその獣の名は狼 凍える光の中、女神の祝福を求め踊り狂う その姿はまさに犬! 首輪をはずせば、御主人様にも噛み付く そろそろ行こうか なあ、相棒 いい子の振りはナシでいこうぜ 何てったって、今夜はmoonlight game 愛しいあの子はぐっすり眠ってる 獲物目掛けて、俺まっしぐら その白い喉元に噛み付きたいのさ 真っ赤なワインをどうぞ トマトジュースじゃ物足りない あとは任せた さあ、相棒 豪華賞品はみんなお前のもの 何てったって、今夜はmoonlight game 愛しいあの子も舌を長くして待ってる 何を怖がる? 彼女のドレスが真っ白でも 体の中には皆同じ、真っ赤な欲が流れているのさ その指で彼女のナカ さぐってみればいい 欲望のまま 何てったって、今夜はmoonlight game 神様なら、俺が喰ってやるさ +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ |
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年末くらいから、このブログの画像だった部分が表示されません。
「美少年欲」がえらいめだっちゃってるんですけど。 おかしいな。どうしたんだろうな。これって、うちのパソだけだよね? ちょっと頑張ってみたけどやっぱりどうすることもできなかったので、もうテンプレ変えました。 フッターの一文にしびれた。 |
![]() あけましておめでとうございます。 今年が、皆様にとって素晴らしい年になりますように。 とりあえず、私の今年の目標は、「約束を忘れないこと」です。 期限のある約束は忘れないんですけどね。 3000hitのリクも、年越えちゃいましたしね。 がんばります。 |
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