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まさかの復活。

2014.10.14 Tue
約1年半ぶりに小説を書きました。
1年半も開くと書き方とか忘れていててんやわんやしたんですが、とりあえず力技で書き上げました。
これでまた置いておいたりすると、どう考えても悪循環なので。

一応、「ただ、永遠の~」の続きというかまた別の話というか、というものになっています。
シリーズにしたい、絶対続き書く! と言ってから2年以上経っているという恐ろしい状態ですが、まだ温めているお話があるので、なんとかがんばりたいと思います。

とりあえず、小説を書く習慣を戻したいです。

1年半何も書かずに再び書くようになって思うのは、創作って気力がいるなーということでした。
時間があっても、考えていることを形にしようと思うと、かなり勢いをつけないと駄目なようです。私の場合。

今回の話についてもいろいろ書きたいなーと思いつつ、小説よりもこの日記の書き方を忘れてて、もうどうしようもないです。

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世界で一番幸福な朝

2014.10.14 Tue
 揺蕩う水の中から、ふわっと浮き上がるような目覚めだった。あ、起きたな、と思うのだけど、瞼はまだ重たくて、朝日の眩しさを避けようと、アンナは身じろぎする。すると、頭の上で誰かがくす、と笑う気配がした。
 その声はアンナの大好きなものだったので、もっと聞きたい、と目はつぶったまま顎を上げて声の方へ擦り寄った。くすくす笑いは更に大きくなって、アンナの胸をくすぐる。ふわりと、これまた大好きな匂い――それを知ったのは、つい昨晩のことだったが――までして、アンナはとうとう我慢できなくなった。眠気に抗って、ゆるゆると瞼を上げる。
 最初に目に入ったのは、清潔な寝間着の襟から覗く優しげな鎖骨。白い喉に、意外とくっきりした影を落とす喉仏。細めの顎、柔らかな弧を描く薄い唇。そして、少しだけ細められた円い薄青の瞳と出会う。
「おはよう、アンナ」
 そう言って柔らかい笑みでこちらを見つめているのは、彼女の最愛の夫ハルマーストだった。そして、この上なく心地いいこの場所が彼の腕の中だということに気付いて、アンナは一気に頬が熱くなるのを感じる。
「おはよう、ハルマ」
 唇の先をつつかれて返事を促され、彼の言葉をまねてなんとか挨拶を返す。
 気恥かしさにそれ以上は顔を見ていられなくなって、アンナは顎を引いてうつむく。すると、額がぐりぐりと彼の胸を押してしまって、余計に擦り寄ることになった。そんな彼女に、ハルマーストがまた笑う気配がするから、アンナはもうどうすればいいかわからない。
 恥ずかしがる彼女を、ハルマーストは囲う腕の輪を狭めてぎゅっと抱きしめた。驚いて反射的にアンナがもがくと、行儀悪くも脚でその身体を押さえこむ。胸にもぐりこんだ茶色い巻き毛の頭をぐわしぐわしとかき回し、きゃあとアンナが声を上げると、ますます興が乗った様子で、アンナの背中をまさぐった。
 くすぐったさにアンナが声を上げて笑うと、同じようにしてハルマーストも笑った。耐えかねてアンナが顔を上げると、ハルマーストはいたずらっぽい瞳で、彼女を見つめている。その瞳に促されて、アンナは身体の間に抱き込まれていた腕をめいっぱい伸ばして、ハルマーストの背に回す。そして、彼女の腕に届く限りの背中や首や腰回りをわしゃわしゃと撫で回す。
 二人できゃっきゃと声を上げながらくすぐり合う。そんな熱のこもらない触れ合いが、アンナにはまだまだ楽しかった。
 本格的に細かく指をうごめかせてハルマーストを追い立て始めたアンナに、降参だとハルマーストは声を上げて、彼女の身体を解放した。息を弾ませながらも、逆転勝利ににんまりと笑うアンナの額に賞品として小さなキスを贈ると、ごろりと仰向けに転がった。アンナがすっかりと緊張を解いてその肩口に擦り寄ると、柔らかく肩を抱いてくれる。
 高い天井に、ふう、とハルマーストは満足気な息をつく。
「この朝が、生きていて一番幸せだ」
 その言葉に、私も、と言いかけて、瞬間アンナは口をつぐんだ。心底満足しているらしい表情で、新婚の朝は天井の絵まで違って見えるとばかりに、そこに描かれた国内各地方を表す模様を見ている横顔を、じっと見上げる。
「……その一番は、今朝で何回目?」
 その言葉に、ハルマーストははっと身を起こしてアンナを見下ろした。枕をなくして、アンナはシーツに頬をつけたまま、彼を見上げる。
 昨日までならば、その言葉が示す微妙な響きに気付かなかったかもしれない。けれどアンナは昨夜ハルマーストと結婚し、少女だった日々から一歩大人の女性としての道に踏み出していた。ただ、大人の女性なら、気付いても言葉にはしなかったかもしれない。それを我慢できないほどには、まだアンナは大人の女性として一人前ではなかった。
 ハルマーストは、片肘を突いたまま、なだめるようにアンナの前髪を撫でた。柔らかな触れ合いにも表情を変えない彼女に――彼は、その表情をどういったものだと捉えたのだろう――その指先と同じほどの繊細さで、ぽとり、と数字を口にした。
 その数を、アンナは口の中でつぶやいて確かめた。両手の指でも足りないほどの数。
 彼自身に育てられた女の部分が、正直に告げられた数に、ちりりと火をおこそうとした。しかしそれが燃え上がるよりも早く、またアンナは気付く。
 ハルマーストが答えた数は、質問を口にしたアンナが予想した数より、いくらか少なかった。そのことが、先ほどの火よりも強く、アンナの胸を痛ませる。
 アンナは田舎の育ちで教養も何もなかったから、ハルマーストの《花嫁》として結婚が決まった後、迎えられた守護宮で教師やら史官やら貴族の奥方やらに《花嫁》としての教育を施された。それは、最低限でしかなく宮殿で暮らす者としては非常におぼつかなかった読み書きから始まり、この国の地理や歴史や経済について、王族や主だった貴族の名前と経歴、人となり、種々の式典での立ち居振る舞い、果てはこの国であるいは王よりも高い地位にいるものの伴侶として、上流階級の婦人のたしなみたる詩歌や楽器などの趣味に至るまで様々あった。ことあるごとに様子を見に来るハルマーストそのひとが、ほどほどでいいと言って、指南役の侯爵未亡人に小言をもらうくらいだったから、芸術美術の類はアンナもそこそこにしていたのだが、それでも《花嫁》としての指導は真面目に受けた。
 その教育の中に、当然としてあったのだ。過去、ハルマーストには何人の《花嫁》がいて、それぞれどのような人物だったのか、は。
 だから、アンナは知っている。ハルマーストがアンナと出会うまでに何度、今朝のような幸福な朝を迎えたのか。その数は、両手の指でも、到底足りないほど。ただ、それは先ほど、彼が口にした数よりもまだ指何本分か多いはずだった。
 ――幸福ではいられなかった朝があったのだ。
 アンナは知っている。全ての《花嫁》は、ハルマーストに愛されて迎えられる。この国の女を《花嫁》たらしめる唯一の条件が、ただハルマーストに愛されるそのことだけだからだ。しかし、愛されて迎えられたはずの《花嫁》が、ハルマーストを愛さなかった例がある。それも、幾度か。
 どうして、そんなことがあり得るのだろう、とアンナは思う。ハルマーストを愛さないでいられるなんてことが。
 ハルマーストとの出会いは半年前、アンナが暮らしていた田舎の村を、国境の視察から王都へ帰るハルマーストがふらりと訪れたせいだった。草原で羊の世話をするアンナに、牛革の上等な膝当てが草の汁に汚れるのも構わず膝を付き、めえめえとうるさい羊に丁寧な刺繍が施されたマントを食まれながら、ハルマーストは求婚したのだ。
 アンナにとって、おとぎ話の王子様と変わらないような存在だった《守護者》ハルマースト。アンナが生まれる遥か昔、この国が世界に生まれた頃からずっと国を守り続けている《守護神》。王都に確かにいるのだと聞いて知ってはいたけれど、一生お目にかかることなんてないと思っていたひと。そのひとが、形振り構わず、お願いですから羊のいないところでと従者が咎めるのも聞かずに、請うたのだ。――私の妻になってほしい、と。
 王都で、《花嫁》修業を受けている間も、ハルマーストは足しげくアンナの元へ通い、何くれと贈り物をしては気を惹こうとし、君を愛してる、君が側にいてくれて嬉しいと臆面もなく告げた。
 はじめは、おとぎ話のお姫様になったように感じていた。守護宮でアンナのために用意されたものは、何もかもが立派で美しく、それをもたらしたハルマーストはそれ以上に凛々しく素敵だ。そしてアンナを何より大切な宝物として扱う。これ以上の物語があるだろうか。
 ただ、アンナは知る。《花嫁》修業の授業の中で、またハルマーストと共に過ごす中で。このおとぎ話が「めでたし、めでたし」を迎えても、ハルマーストはまた新たな物語を始めなければならないことを。何度も何度も、ひとりで「むかしむかし、あるところに」を繰り返していることを。
 彼がアンナに囁く愛の言葉が、まぎれもない本心だというのは身をもって知っている。だって彼は、アンナのことが好きで仕方がないのだ。執務の暇を見つけてはアンナのもとを訪れ、つい長居をして従者に引っ立てられていく。アンナ付きの侍女を抱き込んで、アンナが好む色や模様の情報を仕入れたり、騎士団の詰め所に出入りしては、若手の騎士とつるんで城下の娘達に人気の菓子や小物を買い付けてきたりする。あの手この手で用意した贈り物にアンナが喜んで笑顔を見せると、彼の方が嬉しくて仕方がないという笑顔を見せるのだ。その心に偽りや装いがないことは、どんな意地の悪い者だって認めざるを得ない。
 今までの妻も、同じように愛したのだろうか。ある日ふと、そんなことを思った。――愛したのだろう。だから、《花嫁》たる条件はただハルマーストが愛したというただ一点だけで、何のこだわりもなく王城はアンナを《花嫁》として迎え入れたのだ。
 それを思ったとき、アンナの胸に広がったのは、嫉妬でも不信感でもなかった。ただ、ハルマーストというひとが、哀しくて、いとしかった。
 彼はこんなにも人を愛するのに、喪うのだ。それも、もう何度も。その喪失は、どれほど彼を傷つけてきたのだろう。それなのに、また愛するのだ。――愛してくれたのだ、私を。
 どうして、私はあんな田舎の羊飼いの娘に生まれてしまったのだろう、とアンナは憎く思う。生まれてから十五年、父や母や兄弟や村の仲間たちのもと、それなりに満たされて暮らしてきた。けれど、王城近くに住まう貴族の娘だったなら、もっと早く、彼に出会えただろう。ハルマーストが《花嫁》を持たない間、生まれた娘をハルマーストに見せる習慣が貴族にはある。そうでなくてもせめて王都の生まれならば、様々な祝祭や行事のたびに、彼がアンナを見つける機会はあった。
 そうであったなら、もっと長く、彼を愛せたのに。喪う痛みと恐れを知っていて、それでもアンナを愛する彼を、一日でも長く孤独から救えたのに。いつかまた、痛みを与えてしまうならばせめて、愛する者すらいない寂しさからは、ほんの少しでも長く。
 質問の後、黙って見返すばかりのアンナに、ハルマーストは困ったように眉を寄せた。少しだけ迷う様子を見せてから、額や目元や頬に唇で触れてくる。それはまるで、過去の恋人を指摘された気まずさをごまかして、アンナの機嫌を取るような仕草で。何百年の時を生きて、幾度も喪失を経験してなお、ただの青年と同じようにアンナを恋う様子が、また愛しい。
「好きよ、ハルマ」
 言うと、ハルマーストはぱっと顔を上げた。その頬を両手で挟んで、正面からまっすぐに彼を見つめる。
「私と過ごす日の中で、『生まれてきて今が一番幸せだ』って思わせてあげる。もう一生、こんな日は来ないってくらい」
 いつかまたきっと、ハルマーストはアンナに置いていかれる。その喪失も、彼を深く傷つける。ならばせめて、思い返すたびにその傷を癒すような幸福を、彼には与えたい。孤独の日にはそれを温めて、ほっと息をつけるような幸福を。
 アンナの言葉に、ハルマーストは一瞬目を瞠って、けれどすぐに柔らかい笑みを浮かべた。頬に添えられた手に己の手を重ねて、優しく握る。楽しみだ、と応える顔は嬉しさにほどけていて。
 それは、幸福な結婚生活の一日目に、ふさわしい朝だった。

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白光する日々

2013.03.30 Sat
 教室に、ペンケースを忘れた。卒業式の後、アルバムを持ち寄って寄せ書きをしあって、そのままにしてしまったのだ。打ち上げに行く友人達には先に行ってもらって、透はひとり、来た道を戻る。
 ほとんどの卒業生が捌けてしまった後の学校は、先程までのお祭り騒ぎが幻のように、いつも通りだった。グラウンドではもう、下級生達が部活に励んでいる。それを横目に見ながら、昇降口への短い煉瓦道を進む。ふいに春先の爽やかに冷たい風が通り抜けて、透は学ランの肩をすくめた。ネックウォーマーに鼻先まで埋めて、両手はポケットに突っ込む。
 踏み込んだ校舎は、ひっそりと静かだった。上履きのスリッパは捨ててしまったから、ソックスで廊下を進む。冷たさがじわりじわりと足の裏に染みて、骨を伝って登ってくる。――これで最後だなんて思いながらさっきは通ったのに、締まらない。そんな愚痴で居心地の悪さを誤魔化して、教室に向かう。
 階段を登って教室階まで来ても、人気はなかった。もう皆、思い思いに出ていってしまったんだろうと思った。早く俺も交ざりたい、そんな気持ちで、透は目当ての教室の扉を勢いよく引いた。
 だから、その教室に、人が残っていて透は驚いた。
 ザッ――ザッ――と、少女が黒板を黒板消しで擦っている。黒く癖のない髪と、長めのスカートを振り乱し、力強く乱暴な仕草で。
 少女は、黒板を消しているのだった。一瞬遅れて、透はそれに思い至る。黒板には、下級生からの卒業を祝う言葉が書かれていたはずだ。それから、テンションの上がった卒業生の落書きやメッセージ、言っておきたかった文句に感謝の言葉。馬鹿馬鹿しくて、ほんの少し真面目なそれらを、少女は一心不乱に消している。
 少女が、腕を大きく一振りした。黒板消しのプラスチック部分が擦れたのか、ギィィと不快な音が上がる。ビクリ、と透は身をすくめた。その気配に気付いてか、少女がふらりと振り返る。円い瞳が、透を捉える。
「富田……」
 意味もなく名前を呼ぶ。少女は居直るように透を見返した。
「どうしたの」
 富田の声には、抑揚がない。
「あ、いや、筆箱忘れて」
 情けない調子で言うと、富田はちらりと教室の端に目をやった。その先を追うと、窓際の机の上に、草臥れたペンケースがぽつりと置かれている。いそいそと、透はそれを取りに行く。
 ――富田だったか、意外だ。ペンケースをリュックにしまいながら、透は思う。
 富田は、大人しい生徒だった。なんの加減か透とは入学してから三年間同じクラスだったが、ほとんど話したこともなく、いつも机に向かって勉強をしていたという印象しかない。
 透は、富田が苦手だった。休み時間、透が友人達と騒いでいると、単語帳を見つめている富田が、視界の端にちらりと映る。それが、なんだか責められているようで、いつも落ち着かなかった。それは透の被害妄想だったが、 透にとって富田は、そんな少女だった。真面目で、静かで、カタい。
 そんな富田が、卒業式の後誰もいなくなった教室で、激情をぶつけるように黒板を消しているなんて。一体、何という場面に出くわしたんだろう。
 ちらりと、富田を窺う。富田は黒板消しを両手で掴んで、濃く書かれた文字をぎゅっぎゅと消していた。その一角をにじるように磨き上げ、はた、と振り返る。
 再び、ぱちりと透と目が合った。盗み見がばれた心地になって、透は焦る。反射的に目を逸らし、助けを求めて視線をさ迷わせる。部屋の隅の埃や、教卓の傷や、蹂躙されて淡くなった落書きや少し縺れた黒髪を見た後、激しく動いてなお皺のないセーラー服が目についた。
 紺のセーラー服は、チョークの粉をかぶって、真っ白になっている。
「お前、制服すごいことになってんぞ」
 富田が、自分の胸元に目を落とす。瞬間、その顔が、きゅ、と歪んだ。
 あ、と透が思う間もなく、その表情は浮かんで消えた。
 富田は同じく真っ白になっている指先で、その襟元に触る。粉は、払うと余計に織りに染みて、滲んだ白が範囲を広げる。その様を見ながら、富田は笑う。
「ほんと……せっかくの、制服が、台無し……」
 は、と息をつくような笑い。
 そうして幾度か、富田はチョークの粉を払い広げる。そして、ぱっと顔を上げると、今度は透を手招きした。その顔には、もう、にこりとした笑みを浮かべている。
 どきりとしながらも、透はそれに従う。呼ばれるまま富田の横に並ぶと、彼女はいたずらっぽく、きらりと目を輝かせた。
 そんな顔もできるのか、と透が思った一瞬、富田は手にした黒板消しを、力の限り、黒板に叩きつけた。
 ばふん、というくぐもった音と共に、チョークの粉を目いっぱい吸わされていた黒板消しが爆発する。粉は煙のようにもうもうと飛び広がり、その場を包む。完全に油断していた透は、その爆風を真正面から受け止めた。
「うわっ、わっ――何すんだよ――!」
 慌てて両手を振り、煙を払う透に、富田はくすくすと笑っている。
「何だよ、もう」
「ごめん」
 眉を寄せる透に、富田は素直に謝った。その口元は、まだ、きゅっと上がっている。いたずらの成功に喜ぶ様子は妙に無邪気で、恨めしい。
「あー、もう、俺まで真っ白だ」
 ポーズだけ怒ったように言って、透は学ランの粉を払おうと手を上げた。
 ばんばんとはたいて、富田に飛ばし返してやろうなんて、仕様もないことを考えていた。もう一度富田に笑い混じりに謝らせて、それで許してやろう、とか、そんなことを。
 それを、富田の細い指が、す、と制す。チョークに染まった白い指が、透の手の甲に触れる。ぎ、と透は動きを止めた。
「ごめんね、……でも」
 固まった手を離れて、富田の指は学ランの胸に滑る。ポケットの縁をなぞって、チョークの粉が飛んだそこに、ひた、と触れる。
「でも、永崎君の詰襟は、きれい。雪の降るのか、桜の散るのか、星の輝くのみたい」
 何度も洗濯をしたせいでてらてらと光る生地を、羨ましげに撫でる。さっと、星が流れて尾を引いた。
 呆然と、透は自分の胸元で富田の指が動く様を眺めていた。ひとしきり、そこに浮かんだ景色を愛でて、富田はつ、と一歩引く。
「誰か、待ってるんじゃないの?」
「え、ああ」
 問われて、自分が何をしにここへ来たのかすっかり忘れていたことに透は気付いた。ペンケースを取りに来ただけで、友人達が待っている。
 富田から離れて、リュックを取り肩に担ぐ。富田はその様子を静かに見ていた。止めはしないし、それ以上何か聞いたりもしない。
「じゃあな」
「うん。ごめんね、永崎君まで汚しちゃって」
「いいよ。どうせ、きったなかったし」
 教室を出ようとして、透は足を止めた。振り返ると、もう一度富田と目が合う。少し眉を下げた黒い瞳が、こちらを見つめている。何か、言わなければ、と言葉を探す。
「クラス会とか、あったら、またな」
 言ってから、それがあまり気の利いた台詞ではないのに気付いたが、もう取り返せなかった。富田は、目を細めて微笑んだ。
 冷たい廊下をまた踏んで、透は教室を後にする。
 視界の端で、いつも単語帳を見つめていた富田。その彼女が、つい今まで、まっすぐに自分を見ていた。
 そんな瞬間が、きっと、何度もあったのかもしれない。彼女が視界の端にいるのにも気付かないくらい、あの教室の空気に夢中だった間に。
 惜しいな、と思う。
 それでも透には、着潰した学ランなどより、今が一番美しく眩しいのだ。
 ――そして、明日はきっと、もっときれいだ。富田にとっても、きっとそうだ。
 そんなことを思いながら、透は外へと駆け出した。


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部員として最後の月一企画に提出したもの。

こういうイベント事って自分の体験がベースになるから、ネタが被る。

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だからと言って、絶対くっついてほしい! っていう訳でもないんだけど。

2012.12.16 Sun
久々に日記書こうかなと思うと、やっぱり漫画の話題。
そういえば、先月出たのはまだ読んでなかったりするんですよね。
7S/EE/DSとかまし/ろのお/ととか。


今日の話題は、ちは/やふ/るなわけですが。

太一くんが! 太一くんが!!
もう言葉では言い表せないけど、太一くんが!!!
彼の幸運は、けっして幸運ではないことなんだなぁと思うとお姉さん泣きそうです。

イケメンで、頭よくて、運動もできて、金持ちで、リーダーシップもあって、過去に彼女がいたこともあるけどヒロインに一途で、なのに運が味方についてないという一点で、少女漫画の唯一のヒーローにはなれない太一くんがとっても好き。
少女漫画で、こんなに応援したい男の子っていない。
千早のことも新のことも全然心配してないのに、太一くんだけはいつも心配。

私の、フィクションにおける好きな男性キャラに対する思いは、いつも「幸せになってほしい」で、彼に対してもそうなんですが。
・ヒロインをめぐる三角関係。
・二人の男子のうちどちらがヒーローか、必ずしも明確ではない。
この2点をふまえると、私が太一を好きでいる限り、千早ちゃんとのハッピーエンドはまずない……。
いや、わかんないよ、わかんない。でも……。
ヒロインが基本無自覚で鈍感なだけに、恋愛的な結末にはハラハラする。

……最終回とかで、千早と新のキスシーンなんか描かれたら泣くかも、私……。

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この2つが一緒に出るなんてどんな僥倖。

2012.10.27 Sat
おお/振りの話は梓がしてたから、じゃあ私はジャイ/キリの話をしようと思ったんだけど、今回はサポーターの回想がメイン(前巻からの続き)だったので、あんまり言うことない……。
若い村越さんは、若いのに渋くてかっこよかった。
ルーキーだから、二十歳そこそこよね。
同世代……もしくは歳下?
何あれかっこよ過ぎる。


おお/振り読みながら、「高校生かわいいなぁ」と思うんだけど、最初読み始めた時、私中学生だったんだよね。
つまり、1巻が主人公高1の春から始まってるにも関わらず、私の方が歳下だった。
それがどうだ。今や私、だいぶん歳上になっちゃったよ。
次の巻が出る頃には、多分モモカンに追いついてるよ。

まあ、これに始まったことじゃないけど。

椿も赤崎も歳下だしなー。世良はギリ歳上だったかな。
堺さんに追いついたりしたら泣くな。


そんなお姉さんは、水谷の未来が地味に心配。
いや、高校生ってそんなもんだけどさぁ。
漫画的にはいっぱいフラグ立ってる気がしてならんのよ。

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